任意素数を法として可約な既約多項式
係数多項式の既約性に関して, 次が成り立ちます.
定理.1
をモニックとする. ある素数が存在してがで既約ならば, は上既約.
をモニックとする. ある素数が存在してがで既約ならば, は上既約.
(証明)
とする. がモニックより, の最高次係数はである. 係数多項式の係数をで考えて*1係数多項式とみなしたものを, と書くことにしよう. すると, *2となるが, が既約より, として良い. の最高次係数はであったので, となるしかない. したがって, は上既約である.
さて, この記事では, 定理.1の逆が成り立たないことを示そうと思います. すなわち目標は, 上既約だが任意の素数に対してで可約となるようなモニックを与えることです. 実は, がこの条件を満たすのですが, その証明の前にいくつか準備をします. (事実と書いたものはこの記事では証明しませんが, 今後別の記事で証明を与えるかもしれません.)
これで準備ができたので, 証明に入ります.
(証明)
(1) とおく. であるから, 素数に関するアイゼンシュタインの既約判定法により, は上既約. したがって, も上既約である.
(2) 以下, 上で考える.
(i) となるが存在するとき,
より, はで可約.
(ii) となるが存在するとき,
より, はで可約.
(iii) となるが存在するとき,
より, はで可約.
ここで, なら(iii)となるので, 以下とする. 事実.4よりであるから, (i)(ii)(iii)のうちどれかが必ず成り立つ. よって, はで可約.