くろの数学手記

数学に関する小話などを書いていきたいです. 学部生なのでお手柔らかに.

Galois群の計算

 今回は, 多項式X^7-11\mathbb{Q}上のGalois群に関する問題を解きます. これは某大学院入試の過去問ですが, なかなかハードな部類に入ると思います. 問題は次の通りです.

問題 f(X):=X^7-11\mathbb{Q}上の最小分解体をL_fとおく. 体の拡大L_f/\mathbb{Q}の中間体の個数を求めよ.

 Galoisの基本定理より, L_f/\mathbb{Q}の中間体はGalois群G:=Gal(L_f/\mathbb{Q})の部分群と1対1に対応します. よって, Gがいくつの部分群を持つかを調べれば良いです.

\zeta:=e^{\frac{2\pi i}{7}}, \alpha:=\sqrt[7]{11}とおく. fの根は\alpha\zeta^k~(0\le k\le 6)なので, L_f=\mathbb{Q}(\zeta,\alpha)となります. 

主張.1 L_f/\mathbb{Q}は42次拡大.

(証明)

f:id:Khronos2106:20200114191630p:plain


円分体の一般論から\mathbb{Q}(\zeta)/\mathbb{Q}は6次拡大. Eisensteinの既約判定法(p=11)によりf\mathbb{Q}上既約なので, \mathbb{Q}(\alpha)/\mathbb{Q}は7(=\deg f)次拡大. よって, [L_f:\mathbb{Q}]は6と7の倍数である. 一方で, L_f/\mathbb{Q}(\zeta)は高々7次拡大なので, L_f/\mathbb{Q}は高々42次拡大. したがって, L_f/\mathbb{Q}は42次拡大である.

\Box

 これで, |G|=42がわかりました. L_f\mathbb{Q}\zeta\alphaで生成されるので, Gの元は\zeta\alphaの行き先で決まります. よって, \phi\in G(\phi(\zeta),\phi(\alpha))で表せます. 一方で, \zeta\alphaはそれぞれ\mathbb{Q}上の共役元に飛ばねばなりません. \zetaの共役元は\zeta^m~(1\le m\le 6)の6個, \alphaの共役元は\alpha\zeta^n~(0\le n\le 6)の7個. |G|=42なので, 結局G=\{ (\zeta^m,\alpha\zeta^n)~|~1\le m\le 6,~0\le n\le 6 \}となります.

主張.2 \sigma:=(\zeta^3,\alpha),~\tau:=(\zeta,\alpha\zeta)とおく.
(1) *1ord(\sigma)=6, ord(\tau)=7.
(2) G=\{ \tau^j \sigma^i~|~0\le i\le 5,0\le j\le 6\}.

(証明)

(2)のみ示す. \tau^j \sigma^i(\zeta)=\tau^j(\zeta^{3^i})=\zeta^{3^i}, \tau^j \sigma^i(\alpha)=\tau^j(\alpha)=\alpha\zeta^jより, \tau^j \sigma^i=(\zeta^{3^i},\alpha\zeta^j)である. 簡単な計算により, \{(\zeta^{3^i},\alpha\zeta^j)~|~0\le i\le 5,0\le j\le 6\}

=\{ (\zeta^m,\alpha\zeta^n)~|~1\le m\le 6,~0\le n\le 6 \}

=G がわかる.

\Box
 これで, G\sigma\tauで生成され, さらにGの元は\tau^j \sigma^iという標準形をもつことがわかりました. 部分群の計算には元の位数の情報が有効なので, Gの元の位数を求めましょう.
主張.3
(1) \tau=\sigma^{-1}\tau^3\sigma.
(2) i\ne 0なら, (\tau^j\sigma^i)^n=\tau^{\frac{3^{in}-1}{3^i-1}j} \sigma^{in}.

(証明)

(1)は簡単な計算により分かるので, (2)のみ示す. 以下, i\ne 0とする.

(\tau^j\sigma^i)^n=\tau^{b_n}\sigma^{a_n}とすると,

\tau^{b_n}\sigma^{a_n}=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}}\tau^j\sigma^i=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}}(\sigma^{-1}\tau^3\sigma)^j\sigma^i

=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}-1}\tau^{3j}\sigma^{i+1}

=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}-1}(\sigma^{-1}\tau^3\sigma)^{3j}\sigma^{i+1}

=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}-2}\tau^{3^2j}\sigma^{i+2}

=\cdots

=\tau^{b_{n-1}}\sigma^{a_{n-1}-a_{n-1}}\tau^{3^{a_{n-1}}j}\sigma^{i+a_{n-1}}

=\tau^{b_{n-1}+3^{a_{n-1}}j}\sigma^{i+a_{n-1}}.

よって, 次の連立漸化式を得る.

\begin{array}{l} a_n=a_{n-1}+i \\ b_n=b_{n-1}+3^{a_{n-1}}j \\ a_0=b_0=0 \end{array}

これを解くことは高校レベルの簡単な計算問題であるから, 解のみを述べる.

 a_n=in,~b_n=\frac{3^{in}-1}{3^i-1}j.

よって, (\tau^j\sigma^i)^n=\tau^{\frac{3^{in}-1}{3^i-1}j}\sigma^{in}である.

\Box
 これで, Gの元の位数を求めることができます. 既に述べた通り, Gの元は\tau^j\sigma^iという一意的な表示(標準形)を持ちます. i=0またはj=0のときは位数は明らかなので, 以下ではi\ne 0,~j\ne 0とします. \sigmaの位数は6で\tauの位数は7なので, 主張.3の結果から, in\equiv 0 \pmod 6, \frac{3^{in}-1}{3^i-1}j\equiv 0 \pmod 7を満たす最小のn\gt0\tau^j\sigma^iの位数です. \mathbb{Z}/7\mathbb{Z}が体であることに注意すると, \frac{3^{in}-1}{3^i-1}j\equiv 0 \pmod 7
\Leftrightarrow 3^{in}-1\equiv 0 \pmod 7
\Leftrightarrow in\equiv 0 \pmod 6. よって, 次を得ます.
主張.4 \tau^j\sigma^iの位数は, 表に示すとおりである.

i \ j 0 1 2 3 4 5 6
0 1 7 7 7 7 7 7
1 6 6 6 6 6 6 6
2 3 3 3 3 3 3 3
3 2 2 2 2 2 2 2
4 3 3 3 3 3 3 3
5 6 6 6 6 6 6 6

 それではいよいよ部分群の計算に入りましょう. Lagrangeの定理より, Gの部分群の位数としてあり得るのは1,2,3,6,7,14,21,42です. 位数1の部分群は単位群\{1\}しかありえず, 位数42の部分群はG自身しかありえません. 素数位数の群は巡回群なので, 特に位数2,3,7の部分群はすべて巡回群です. \mathbb{Z}/2\mathbb{Z}は位数2の元1つと単位元からなるので, Gの位数2の部分群はGの位数2の元1つと対応します. 主張.4よりGは位数2の元を7つ持つので, 位数2の部分群は7つであることがわかります. 同じように, \mathbb{Z}/3\mathbb{Z}は位数3の元2つと単位元からなるので, 位数3の部分群は位数3の元2つと対応し, Gの位数3の部分群は7つ. \mathbb{Z}/7\mathbb{Z}は位数7の元6つと単位元からなるので, 位数7の部分群は位数7の元6つと対応し, Gの位数7の部分群は1つ. 残るは位数6,14,21の部分群だけです.

主張.5 
(1) Gの位数6の部分群はすべて巡回群.
(2) Gの位数6の部分群は7つ.
(3) Gにおいて, H:=\{\tau^j\sigma^i~|~i=0,3;0\le j\le 6\}は位数14の唯一の部分群.
(4) Gにおいて, K:=\{\tau^j\sigma^i~|~i=0,2,4;0\le j\le 6\}は位数21の唯一の部分群.

(証明)

(1) 位数6の群は対称群S_3巡回群\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}のいずれかに同型であることが知られている. S_3の相異なる2つの位数2の元(互換)は, 掛け合わせることで位数3の元になる. ところが, Gにはそのような位数2のペアは存在しない. 実際, 主張.4よりGの位数2の元は\tau^j\sigma^3と表わせ, ord(\tau^j\sigma^3\tau^{j'}\sigma^3)=ord(\tau^{j-j'})\ne 3. したがって, Gの位数6の部分群はすべて巡回群である.

(2) \mathbb{Z}/6\mathbb{Z}は位数6の元を2つ含むので, (1)と合わせると, 結局位数6の部分群は位数6の元2つと対応する. よって, 主張.4より7つである.

(3) Hが部分群であることは容易に確かめられる. 逆に, 位数14の部分群H'があったとすると, Lagrangeの定理からH'の元の位数は14の約数である. ところが, 主張.4によると, そのような元はGにちょうど14個しかなく, それらはすべてHの元である. よって, H'=Hとなる.

(4) (3)と同様に示すことができるので, 省略する.

\Box

 以上で, 目標の問題を解くことができました. 以下に結果をまとめておきます.

結果 f(X):=X^7-11\mathbb{Q}上の最小分解体をL_fとおく.
L_f/\mathbb{Q}は42次拡大であり, そのGalois群Gal(L_f/\mathbb{Q})*2は表に示す通り合計26個の部分群をもつ. したがってGaloisの基本定理より, L_f/\mathbb{Q}は26個の中間体をもつ.

位数 1 2 3 6 7 14 21 42
個数 1 7 7 7 1 1 1 1

 

 

 

 

 

*1:ordは元の位数を指す.

*2:今回は特にふれなかったが, 実はこのGalois群は半直積\mathbb{Z}/7\mathbb{Z}\rtimes\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}に同型.

任意素数を法として可約な既約多項式

\mathbb{Z}係数多項式の既約性に関して,  次が成り立ちます.

定理.1
f(X)\in\mathbb{Z}[X]をモニックとする.  ある素数pが存在してf\bmod pで既約ならば,  f\mathbb{Z}上既約.
(証明)
f=gh~~(g,h\in\mathbb{Z}[X])とする.  fがモニックより,  g,hの最高次係数は\pm 1である.  \mathbb{Z}係数多項式fの係数を\bmod pで考えて\mathbb{F}_p*1係数多項式とみなしたものを,  \bar{f}と書くことにしよう.  すると,  \bar{f}=\bar{g} \bar{h} \pmod p*2となるが,  \bar{f}が既約より,  \bar{g}\in\mathbb{F}_p^\timesとして良い.  gの最高次係数は\pm 1であったので,  g=\pm 1となるしかない.  したがって,  f\mathbb{Z}上既約である.
\Box
 さて,  この記事では,  定理.1の逆が成り立たないことを示そうと思います.  すなわち目標は,  \mathbb{Z}上既約だが任意の素数pに対して\bmod pで可約となるようなモニックf(X)\in\mathbb{Z}[X]を与えることです.  実は,  X^4 +1がこの条件を満たすのですが,  その証明の前にいくつか準備をします.  (事実と書いたものはこの記事では証明しませんが,  今後別の記事で証明を与えるかもしれません.)
事実.2 (アイゼンシュタインの既約判定法)
f(X)=a_n X^n+\cdots+a_1 X^1+a_0\in\mathbb{Z}[X]~~(a_n\neq 0)は,  次の条件(i)(ii)(iii)を満たす素数pが存在するならば\mathbb{Z}上既約である.
(i) a_npの倍数でない.
(ii) a_{n-1},\cdots,a_0pの倍数.
(iii) a_0p^2の倍数でない.
定義.3
p素数m\in\mathbb{Z}pの倍数でないとする.
(1) a^2=m\pmod pとなるa\in\mathbb{Z}があるとき,  m\bmod p平方剰余であるという.
(2) pが奇素数なら,
\left(\displaystyle\frac{m}{p}\right)=\begin{cases}1~~~~(mが\bmod pで平方剰余)\\ -1~(otherwise)\end{cases}

と定義し,  これをルジャンドル記号という.*3
事実.4
pが奇素数で,  m,n\in\mathbb{Z}pの倍数でないならば,
\left(\displaystyle\frac{mn}{p}\right)=\left(\displaystyle\frac{m}{p}\right)\left(\displaystyle\frac{n}{p}\right).
 これで準備ができたので,  証明に入ります.
命題.5
(1) X^4 +1\mathbb{Z}上既約.
(2) 任意の素数pに対して,  X^4 +1\bmod pで可約.
(証明)
(1) f(X):=X^4 +1とおく.  f(X+1)=(X+1)^4 +1=X^4+4X^3+6X^2+4X+2であるから,  素数2に関するアイゼンシュタインの既約判定法により,  f(X+1)\mathbb{Z}上既約.  したがって,   f(X)=X^4 +1\mathbb{Z}上既約である.
(2) 以下,  \mathbb{F}_p上で考える.
  (i) a^2=2となるa\in\mathbb{F}_pが存在するとき,
X^4+1=(X^2+aX+1)(X^2-aX+1)より,  X^4 +1\bmod pで可約.
  (ii) b^2=-2となるb\in\mathbb{F}_pが存在するとき,
X^4+1=(X^2+bX-1)(X^2-bX-1)より,  X^4 +1\bmod pで可約.
  (iii) c^2=-1となるc\in\mathbb{F}_pが存在するとき,
X^4+1=(X^2+c)(X^2-c)より,  X^4 +1\bmod pで可約.
ここで,  p=2なら(iii)となるので,  以下p\neq 2とする.  事実.4より\left(\displaystyle\frac{-2}{p}\right)=\left(\displaystyle\frac{-1}{p}\right)\left(\displaystyle\frac{2}{p}\right)であるから,  (i)(ii)(iii)のうちどれかが必ず成り立つ.  よって,  X^4 +1\bmod pで可約.
 \Box
 

*1:\mathbb{F}_p:=\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}

*2:\overline{gh}=\bar{g}\bar{h}が成り立つことは容易に示せます.

*3:ルジャンドル記号はp=2のときは考えない.

ルベーグ可測集合系の濃度

ルベーグ可測集合系とは,  \mathbb{R}中のルベーグ可測集合全体を指します.  以後,  これを\mathfrak{M}と書くことにします.  さて,  目標は\mathfrak{M}の濃度,  すなわち|\mathfrak{M}|を求めることです.  これは,  私が数学基礎論セミナーで読んでいたとある数学書に,  演習問題として載っていたものです.  解答はおろかヒントすら載っていなかったので,  苦労を強いられました...

さっそく証明に移りましょう.  後で明らかになりますが,  証明の核心は,  ルベーグ測度0の非可算集合の構成にあります.

まず,  次の記法を用意します.

記法.1
部分集合I\subset\mathbb{R},  実数a,b\in\mathbb{R}に対して,  aI+b:=\{ax+b~|~x\in I\}と書く.

 次に,  カントール集合を定義します.  これがルベーグ測度0の非可算集合であることを,  後に示します.

定義.2
\displaystyle I_0:=[0,1], I_n:=\left(\frac{1}{3}I_{n-1}\right)\cup\left(\frac{1}{3}I_{n-1}+\frac{2}{3}\right) とし,  \mathfrak{c}:=\bigcap_{n=0}^\infty I_nと定義する.  
\mathbb{R}の部分集合\mathfrak{c}を,  カントール集合という.
命題.3
  1. カントール集合\mathfrak{c}ルベーグ可測.  すなわち,  \mathfrak{c}\in\mathfrak{M}.
  2. \mu\mathbb{R}ルベーグ測度とするとき,  \mu(\mathfrak{c})=0.

(証明)

  1. \mathfrak{c}は,  可算個のルベーグ可測集合I_n~~(n=0,1,2,\cdots)の共通部分なので,  ルベーグ可測である.
  2. \mu(I_0)=1,~~\mu(I_n)=\displaystyle\frac{2}{3}\mu(I_{n-1})より,  \forall n\in\mathbb{N},~\mu(I_n)=\left(\displaystyle\frac{2}{3}\right)^n.  よって,  \mu(\mathfrak{c})\le\mu(I_n)=\left(\displaystyle\frac{2}{3}\right)^nが任意のn\in\mathbb{N}について成り立つ.  ゆえに\mu(\mathfrak{c})=0.  
    \Box

カントール集合が非可算であることを示すために,  次の補題を示そう.

補題.4
3進展開で0.a_1a_2a_3\cdots~~(a_n=0~or~2)と表せる実数全体をXとおく.  このとき,  X\subset\mathfrak{c}が成り立つ.
(証明)
\mathfrak{c}:=\bigcap_{n=1}^\infty I_nであるから,  \forall n\in\mathbb{N},~X\subset I_nを示せば良い.  nに関する帰納法で示そう.  X\subset I_0:=[0,1]は明らかである.  n\gt 0とする.  x=0.a_1a_2a_3\cdots\in Xを任意にとる.  a_1=0~or~2より,  3x3x-2のうち一方はXに属す.*1  Xに属する方をyとおくと,  帰納法の仮定よりy\in X\subset I_{n-1}.  今,  \displaystyle x=\frac{1}{3}y~or~\frac{1}{3}y+\frac{2}{3}となっているので,  x\in I_n.  よってX\subset I_n.  以上で,  nに関する帰納法によって\forall n\in\mathbb{N},~X\subset I_nが示された.  したがって,  X\subset\mathfrak{c}が成り立つ.
\Box
系.5
カントール集合\mathfrak{c}\mathbb{R}と同じ濃度*2をもつ.  すなわち,  |\mathfrak{c}|=2^{\aleph_0}.
(証明)
補題.4よりX\subset\mathfrak{c}\subset\mathbb{R}なので,  |X|\leq|\mathfrak{c}|\leq|\mathbb{R}|=2^{\aleph_0}が成り立つ.  一方,  \mathbb{N}から2点集合への写像全体と,  Xとの間には全単射が存在するので,  \mathbb{N}の冪集合\mathfrak{P}(\mathbb{N})Xとの間に全単射がある.  よって,  |X|=2^{\aleph_0}が成り立つので,  |\mathfrak{c}|=2^{\aleph_0}が従う.
\Box
これで,  カントール集合\mathfrak{c}ルベーグ測度0の非可算集合であることがわかりました.  それでは,  目標としていたルベーグ可測集合系の濃度|\mathfrak{M}|を計算しましょう.
定理.6
\mathfrak{M}\mathbb{R}ルベーグ可測集合全体とするとき,  |\mathfrak{M}|=2^{2^{\aleph_0}}が成り立つ.
(証明)
\mu(\mathfrak{c})=0であることとルベーグ測度の完備性から,  \mathfrak{c}の任意の部分集合はルベーグ可測である.   よって,  \mathfrak{P}(\mathfrak{c})\subset\mathfrak{M}\subset\mathfrak{P}(\mathbb{R})が成り立つ.  系.5より|\mathfrak{P}(\mathfrak{c})|=|\mathfrak{P}(\mathbb{R})|=2^{2^{\aleph_0}}であるから,  |\mathfrak{M}|=2^{2^{\aleph_0}}が従う.
\Box
結局,  \mathbb{R}ルベーグ可測集合全体\mathfrak{M}は、\mathbb{R}の冪集合と同じ濃度を持つことがわかりました.  \mathfrak{M}\mathbb{R}の部分集合族なので,  これはルベーグ可測集合が考えうる限りもっとも多く存在することを意味します.  
さて,  証明の核心は,  この記事の冒頭でも述べたとおり,  ルベーグ測度0の非可算集合の構成でした.  そのような集合を構成することができれば,  ルベーグ測度の完備性によって,  大量のルベーグ可測集合を生み出すことができるからです.  今回はルベーグ測度0の非可算集合としてカントール集合を構成しましたが,  カントール集合である必要はないということです.

*1:3進数表示で3x=a_1.a_2a_3\cdotsとなることから従う.

*2:連続体濃度2^{\aleph_0}のこと.  |\mathbb{R}|=2^{\aleph_0}となることが知られている.